千葉絵里の 「英語・コミュニケーション・通訳で幸せになろう!」ブログ

「言葉で人をつなぐ、心をつなぐ」コミュニケーター/リンギスト/英日会議通訳者/英語講師/コーチ/会議ファシリテーターのブログです。通訳者としての得意分野はプロフィールをご参照ください。

通訳の仕事において役に立った知識

仕事をしていて、これを知っていてよかったと思うことは沢山ある。経験が思いがけず生きたというエピソードも枚挙に暇ないが、まずはそういう意外性が少ない、大きなものをいくつかピックアップしてみた。

 

  1. プロジェクト管理の知識

 

一定規模以上の企業において、「プロジェクト」という形をとって仕事を行う必要がある時は、確立された手順に従って仕事をしていくことが殆どではないかと思う。即ち、「新製品の発売」などの目標日から逆算して、○か月までに何をする、ということを決め、実行していくというもの。

 

その「手順」の中では、どういう順番を追っていつまでに誰が何をしなければならないか、ということが細かく決まっている。タスクを確実に実行していくために、節目(マイルストーン)ごとにイベントを設け、レビューを行っていくのが普通だ。各マイルストーンでの成果物も規定されており、何をもってマイルストーンを成功裏に通過できたかを判断する基準があり、成功・失敗に応じて次に進む道筋が決まっている。

 

私は、製造業の会社で働く中で門前の小僧で覚えていった形だが、不慣れな方はこういうサイトで確認されるといいのではないかと思う。素人にも分かりやすくまとまっており、よく使う用語の紹介もある。

 

プロジェクト管理の知識は、業界を問わず役立つことが多いので、是非持っておきたいものの一つだ。更に、業界特有の仕事の進め方というものもあるので、それも知っておくと便利だと思う。

 

例えば、IT業界での開発作業の進め方は、計画→要件定義→外部設計→内部設計→製造(プログラミング)→テスト→システム移行→運用・保守という手順を踏んで進む(こちらのサイトなどを参照)。プロジェクトのどの段階でどういう作業をするか決まっていることが殆どなので、仕事を依頼される際にプロジェクトがどのフェーズにあるのかを教えていただけるだけでも参考になることは多い。

 

変化の激しい業界では、プロジェクト管理の手法も異なるものがあるかもしれない。自動運転やIoTなどのように、業界そのものを変容させるような取り組みを生み出す過程では、全く違うプロセスが働いているのではないかということも想像できる。しかし、それが何か具体的な商品やサービスに結びついてくる段階では、やはり何らかのプロジェクト管理の手法が活用されているのではないかと思う。

 

  1. ISOマネジメントに関する知識

 

これも、1のプロジェクト管理の知識に似ている。ISOの定める規格に従って、例えば品質管理や環境に配慮した取り組み、あるいは情報セキュリティの確保などをどういう手順でどういうツールを用いて行っていくかが決まっている。ISO認証の仕組みや基本的な考え方、頻出する用語やツールを覚えておくだけでも随分役に立つ。

 

遭遇する頻度が高いものは品質管理だと思う。ISO9001の認証取得・維持更新の審査自体の通訳を依頼されたこともあるし、内部監査等もISO規格、あるいはこれに準拠する社内標準に基づいて実施されることが多い。業界に特化した品質マネジメントシステムもあり(例:自動車産業向けの品質マネジメントシステムISO/TS 16949)、この中でコア・ツールとして用いられているAPQP(先行製品品質計画)FMEA(故障モード影響度解析)などは他の業界の仕事でもよく出てくる。V&V (Verification and Validation:検証と妥当性確認)という用語も、ISOやそれに準拠するシステムを用いている場合によく聞く。

 

  1. 生産管理やカイゼンの仕組み

 

私たちの目に触れるのは、工程ごとに手順書があり、手順書に基づいて一つ一つの標準作業が文書で規定されていて、仕事の成果が数値で管理されている工場が殆どであると思う。現場は整理整頓がされている上に、注意を要する事柄やKPI(重要業績評価指標)、Control Pointにおける測定値などが目で見て分かりやすい形に表示されていることが多い。

 

同じ会社でも、国や製造拠点が違えば生産管理の体制や実際の成績にばらつきがあるのは普通であるし、作業標準があっても、企業は常にさらなる改善・向上の機会を模索するのが通常だ。困ったことがあった際に、現場でカイゼンのアイディアを求め、効果が高いものは標準作業にも織り込んでいくということが日常的に行われている。タクトタイム、サイクルタイムなど、JIT(ジャストインタイム)関連の用語を覚えておくと、工場見学の際などは役に立つことが多いだろう。

 

  1. 会計と経済学に関する基本的な知識

 

ビジネス通訳を行っていく上では必須。高校の政治経済の教科書に載っていたような知識が案外漏れていたりするので、これを押さえるだけでも随分ニュースの理解度などが違ってくる気がしている。会計は、特にB/S(貸借対照表)項目に関しては、意識的な知識増強が必要だと思う。P/L(損益計算書)項目に関しては、個人の経済活動から類推できる部分も多いが、繰延税金資産の扱いなど、B/S項目は類推できない概念が多いからだ。こちらについては、より深い知識が必要だと最近感じるので、引き続き勉強中。

 

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製品開発や製造関連の仕事を多く担当していたため、こういうラインナップになった。その人の経験により、また対象分野により、何が役に立つかは異なるだろう。そういう知恵や知識を通訳者の間で共有できるようになると嬉しい。

 

個人的にこれから学んでみたいのは統計。大量のデータを扱う際にどういう手法を用いるかはこれまた業界を問わない知識だと思う。まとまった時間を設けて学んでみたいと思っている。