千葉絵里 オフィシャル・ブログ

「言葉で人をつなぐ、心をつなぐ」コミュニケーター/リンギスト/英日会議通訳者/英語講師/コーチ/会議ファシリテーターのブログです。通訳者としての得意分野はプロフィールをご参照ください。

感覚を動員する

心理学や心理療法を学び、今でもたびたびワークショップに参加していて感じるのだけれど、人にはそれぞれ得意な感覚がある。例えばある人は聴覚に非常に優れたものを持っていたり、何かアイディアを思いつくときは必ず絵が浮かんだり、という人もいる。そういう感覚を学習に生かさない手はない。

 

例えばどういうことかというと・・・。

 

・クイック・レスポンスの問題と答えを録音し、答えが流れる前に解答できるように練習する。

 

私は受験生の時、世界史の教科書を「音読」して覚えたし、人の声の記憶が長く残るほうなので、割と聴覚優位だと思う。だからなのか、この学習法はかなり前から取り入れている。どうしても期限までに覚えなければならない用語などが多い時はこういう録音を作り、家事をしながら練習している。まだ通訳の仕事を始めて間もない頃、展示会の仕事で化学用語を40個ほど一晩で覚えなければならなかった時にも活用した。録音をするのは手間だけれど、いつでもどこでも練習できるのがよい。満員電車の中でもできる。「クイック」というからには、考え込む間を置かず答えられるようにする必要がある。実際、通訳をする場面でも、スピーカーが話し終わってから(逐次)通訳を開始するまでに3秒以上の間があると聞いている人が不安になる、という指摘を新崎隆子先生の本で読んだことがある。

 

・音読する

 

英語学習において口を動かすことの重要性はいくら強調してもしすぎることはない。自分も、仕事の間が空いたり訓練をさぼったりすると、たちまち英語を話す筋肉が落ちてしまう。こういうこともあって、私は、聞き流し方式で英会話が身につくという学習方法には懐疑的だ。決まりきったフレーズを覚える段階までは有効かもしれない。

 

英語は日本語に比べて口の周りの筋肉をよく使うし、お腹から声が出ることが必要だ。「通訳者のためのボイストレーニング」という講習を受けたことがあるが、その講座も腹式呼吸の練習から始まる。よく通る声を作る上で必須なのだ。そういうことを意識しながら練習するためには、動画を見ながらリプロダクションをするのもいいと思う。スピーカーがどういう口の動きをしているか、どういう身振りや感情をこめてその言葉やフレーズを発音しているかも確認できる。Youtubeで検索すれば、発音指導の動画なども見つけることができる。

 

・図解を作る・ノートをまとめる

 

下記は、仕事上必要に迫られて生物学の基礎を復習することになった時に作ったノート。文字だけの用語リストも作成したが、文字だけではわかりにくいので、図に書き込みをしたり、自分で図や絵を描いたりした。自分でまとめる作業をする中で情報が整理されていくし、視覚的な工夫をすることで記憶にも残りやすくなる。

 

 

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これは色々な分野で応用可能だと思う。例えば、受講生には、複雑な構文の英語の文章が一読して理解できない時は、図解することを勧めている。説明をしたりしていただいたりする時も、できるだけ図や絵などを活用するようにしている。

 

「手を動かす」のが有効なのは、次のような分野にも言える。例えば「円安になれば輸出産業が儲かる」というのはマクロ経済の基礎の基礎だけれど、言葉で聞いただけではどういうことか?と思うこともあるだろう。でも、実際に1ドル=100円だった時の輸出製品のドル建ての値段と、120円になった時のドル建ての値段を、手を動かして計算してみたらすぐに分かる(この場合、製品価格そのものに変更はないものとする)。また、「A部門が全社売上に占める割合は30%、しかし全社営業利益に占める割合は70%、ということはA部門には利益率の高い製品が多いのだな・・・」などということも分かる。最近は、そういうものをグラフに表したプレゼン資料があるのが普通だ。でも、ない時は、自分で計算機を使って計算をしたりしている。数字の羅列だけでは分かりにくくても、計算をすることで見えてくるストーリーがあったりするので面白い。

 

また、「ノートを作る」という点で言えば、正確な知識を記憶するために、穴埋め式問題集を自作して勉強する、という方法もなかなか有効なようだ(こちらのサイトなどを参照)。まだ試したことはないが、次に医学関係の仕事に取り組む時にやってみたいと思っている。

 

更に。医学の仕事などでは覚えなければならない用語や概念が膨大なので、殆どありとあらゆる方法を試している。短冊型のカードをまとめてリングに通した暗記カードを作成して練習する、というのもその一つ。最近ではアプリもあるようだ。

 

・動画を活用する

 

最近の英語学習で便利だなと思うのが動画の存在。色々な活用方法がある。活用するこつとしては、ただ視聴するだけではなく、できるだけ自分で何らかのアクションを取ること。知らない言葉を書き留めるでもいいし、不明点をスクリプトや字幕で確認するということでもいい。リプロダクションなどをしてみるとなおよい。自分で積極的にアクションを取ることで、より効果が上がるのではないかと思っている。

 

知識を増やす、という点でも動画は優れている。私のお気に入りは、製造工程などを録画した動画や、化学反応や物理現象などをアニメで解説している動画。海外動画、特にアメリカで作成された教育動画は、「楽しく勉強する」工夫が溢れていて、見ているだけでも楽しい。ネイティブ・スピーカーがちょっとしたものを組み立てたり料理をしたりしている動画も参考になる。こういうところで使われる英語表現は案外本には載っていないのだ。その他、仕事でスピーカーのお名前以外に情報がない場合、文献は勿論探すけれども、Youtubeでの動画検索も行っている。その人がどういうトピックを好み、どういう言葉遣いでどういう話し方をするのかを確認するだけでも非常に参考になるからだ。

 

・体を動かしてロールプレイをする

 

先日、ネイティブの先生がロールプレイを指導される授業を見学させていただいたのだが、机や椅子も場面に応じて移動させるなど、なかなか本格的なものだった。座ってただ読み合わせをしている時よりも臨場感があり、受講生の感情の込め方やイントネーションなども自然だった。感情や身体の感覚を伴う記憶は定着しやすい。通訳者仲間でも、「コケた単語は忘れない」という格言があるくらいだ。体を動かして、感情とともに、たくさん演じてみる。スピーチを暗記するにしても、オバマ前大統領やスティーブ・ジョブスになり切ったつもりで身振り手振りを入れてプレゼンしてみる。楽しく学習する方法の一つだと思う。

 

英語学習に限らず、何かの技能を身につけることは一朝一夕ではいかず、つらいことも多い。その中で、いかに楽しく、効果の上がる方法を工夫するかが継続の鍵ではないかと思う。そして、「継続は力」になる。